老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体

2017年7月8日 Category : , 0

活字で読む、ウシジマくん的な一冊。

取材で得たネタを繋いでいたら、小説みたいになっちゃいました、という感じで読みやすいのだが、しっかりした分析やデータなどを期待すると、少々肩透かしなところもある。水は高きところから低きへ流れるのだが、階級社会においては、金は高いところに留まるばかり。その留まる金を狙うハンターのように描かれる詐欺グループの若者たち。ダークサイドのよくあるビルドゥングスロマンとも読める。

世代間に横たわるルサンチマンを明確にしたうえで、老人喰いの正体に迫るのは、わかりやすぎるきらいもあるが、薄らぼんやりこの詐欺をみてきた人に、指針を与えたことは評価できる。ある意味で、読者に対して、ルサンチマンを共有する作業、共感させているようにも感じる。悪はどう描いても、魅力的にならざるを得ないのだ。

いわゆるオレオレ詐欺の歴史、現在進行形の動きなどについても、わかるところが面白い。特にヤクザが介入するようになって、どう詐欺の形態が変化したのかというところは、とても興味深い。

肯定されることはけっして無いだろうが、共感されるおそれはたぶんにあるだろう、そんな一冊。

高齢者を狙う犯罪とは、圧倒的経済弱者である若者たちが、圧倒的経済強者である高齢者に向ける反逆の刃なのだ。


老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体



『幸せになる、ハワイのパンケーキ&朝ごはん』オアフ島で食べたい人気の100皿

2017年6月5日 Category : , 0

パンケーキを主として、ハワイで食べることができる朝ごはんを、80店・100皿まとめた一冊。

ハワイが好きならば、きらきらと輝くような100皿のパンケーキ&朝ごはんを眺めているだけで、幸せになるだろう。ホイップクリームをたっぷり盛ったパンケーキ、色とりどりのフルーツをちりばめたパンケーキ、シンプルだがこれは旨いにちがいないと確信できるパンケーキ、甘口が苦手の方にはベーコンや目玉焼きとあわせたパンケーキなどなど、どれもこれも、掲載された写真をみるだけで、ハートと胃をがっしと掴まれることだろう。

ハワイでゆっくり遊ぶならば、よい朝食ガイドになること間違いなし。巻末には、おみやげ用のパンケーキミックスで作るレシピ、焼き方のコツやトッピングのアレンジ、ソースの作り方もまとめられている。

ハワイに行くか、雰囲気を真似るか。

『幸せになる、ハワイのパンケーキ&朝ごはん』オアフ島で食べたい人気の100皿




国立科学博物館のひみつ

2017年5月7日 Category : , , 0

科博に遊びにいくことになったので、予習をかねて読んでみた。科博とは、もちろん上野にある国立科学博物館のこと。本書は、成毛眞氏と元副館長の折原守氏が、展示を見て歩きながら、国立科学博物館のひみつに迫る、ガイドブック的な一冊となっている。

取材の時期が、地球館リニューアル工事中ということで、日本館のみのナビとなっているのが、残念でならない。とはいえ、このボリュームと豊富なカラー写真、工夫された展示方法や見逃しそうな情報など、ひとつひとつの資料に対して、まんぜんと見ているだけでは気づかないであろう、掘り下げ方が素晴らしい。

地球館についての情報は掲載されていないのだが、国立科学博物館が所蔵する430万点の標本・資料の、実に99.7%を保管する筑波研究施設への潜入取材しているのがよい。(つまりは、上野で展示されているのは、所蔵資料全体の0.3%でしかないのだ!)筑波にある研究施設は、基本的に公開されていないので、そのバックヤードを覗くことができるのは大変貴重。0.3%を支えている、その物量と技量と熱量が、しっかりとまとめられている。

本書の後半では、過去の特別展・企画展のポスターや資料がまとめられている。いまさらながら、この展示は見たかった!と思ってしまうものばかり。あとの祭りとは、このこと。

著者の好奇心のおもむくままに、一緒に国立科学博物館で遊んでいるような気になってしまう素敵な一冊。一読すれば、科博に行きたくてウズウズすること間違いなし。

国立科学博物館のひみつ




まばたき

2017年4月3日 Category : , , 0

歌人である穂村弘と、絵本作家の酒井駒子。そんな二人がつくった絵本は、ちょっと不思議で、ちょっと怖く、短いけれど、なんとも言えぬ余韻に包まれる、そんな一冊。

まばたきとは、つまり瞬き。ちょうちょが飛び、時計の針が12時を告げる、猫が鼠を捕えて、角砂糖が紅茶に沈み、溶ける。そして、少女によびかけるとき……さまざまな瞬間をとらえ、表現したこの作品は、簡潔で無駄のない構成と、シンプルで計算されていながらも、飽きることのない深い色を湛えた絵がたまらなくよい。

世界は連続しているようで、まばたににより、瞬間の積み重ねに還元されている。まばたきの時間は、およそ100~150ミリ秒。その一瞬の暗闇の世界を、暴き出す――ストップモーションアニメのコマを止め、瞬間をあぶりだすように。そこに映っているものは、いったい何なのか。魔的な、それでいて魅力的な何か。

美しいけれど、怖い絵本。

まばたき




ひとり飲む、京都

2017年3月17日 Category : , 0

京都の夜を楽しむための、ただのガイドブックではない。
退屈で欠けのない日常を離れ、まったく自由な時間が1週間、手に入るとするならば、あなたはどう過ごすだろうか。京都中心部にあるホテルを定宿にし、毎夜毎夜、出歩き、食べ、飲み歩く――著者の答えはこうだ。季節を変えて、6月と1月の2回、まとめて2週間、京都の食べ歩きの記録をまとめたものが、本書となる。

朝の喫茶店での珈琲、もしくは昼のうどんや丼で始まり、夜は居酒屋や割烹から。小腹が満たされると、続けざまにバーへ。ときにホテルで小休止を入れて、また夜の京都へ出陣ということも。京都の街が持つ雰囲気の描写、店主らとの何気ない会話、ひとり呑みならではの地元の人との触れ合いから、著者の人柄が伝わってくるのがよい。

キザでインテリで小金持ち的、もしくは逆に、なにか卑下したような、そんな類の嫌味はどこにもなく、あくまでもどこまでも自然体。老舗から新しいお店まで、知られた店もそうでないところも、飄々と夜の店を渡り歩きながら、ときにただのオヤジでありながら、自由で洒脱な空気が心地よい。ただただその人と京都の街に憧れる。1週間という限られた時間だからこそ、京都の生活に迫ることができる隙間、観光と生活の狭間があるのだ。旅は斯くありたいと、妄想も広がる。

各店での飲食費も公開されており、巻末には訪れた店のデータもまとめられている。ただのガイドブックではないと云いつつ、ガイドブックとしても使えるようになっているのは、著者の優しさか、はたまた蛇足か。とりあえず、本書を読んで、すこしでも気分があがったならば、その隙にすぐにでも、勢い休暇をとってしまい、何も考えず、あなたにとっての京都へ、向かってしまえばよい。そんな気分にさせてしまう本である。

東京の新しい店は立ち飲み然り、昭和レトロ然り「今はこれがアタル」などの流行追随ばかりで、「アタル」とすぐに二号店、三号店と、やっていることは「事業」なのがとても嫌だ。当たらなければすぐやめて他の業態を探し、そこには自分一人の世界で客に対峙する美学、気概のかけらもない。東京には経済はあっても文化はないのだろう。

ひとり飲む、京都



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